オール電化

2024/09/27

寒冷地域のエコキュートの選び方は?寒冷地でエコキュートを使うメリット・デメリットも解説

寒冷地域のエコキュートの選び方は?寒冷地でエコキュートを使うメリット・デメリットも解説

エコキュートには標準仕様とは別に寒冷地域仕様があり、特定の地域に住んでいる方は寒冷地仕様のエコキュートを購入します。基本的に標準仕様と性能面や機能面にあまり違いはありませんが、寒冷地仕様ならではの注意点や選び方があります。

そこで今回は、寒冷地仕様のエコキュートの機種選びについて解説します。
寒冷地の定義や寒冷地でエコキュートを使うメリット・デメリットについても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

寒冷地域の定義

エコキュートは外気を取り込んでお湯を作る給湯システムです。
そのため、外気温が一定よりも低い地域だと標準仕様のエコキュートだと効率が低下することから、寒冷地仕様のエコキュートを選ぶことになります。

寒冷地域の定義は建設省が定めた日本の断熱化基準の「次世代省エネルギー基準」に基づき、Ⅰ地域とⅡ地域が該当します。

具体的には次の都道府県で外気温がマイナス10℃を下回る地域だと、寒冷地仕様のエコキュートを選択することになります。

地方 都道府県
北海道 北海道
東北地方 青森県
秋田県
岩手県
山形県
福島県
関東地方 栃木県
群馬県
甲信越 山梨県
長野県
新潟県
北陸 石川県
富山県
福井県
中部地方 岐阜県

ただし、外気温がマイナス20℃を下回る地域ではエコキュートを屋外に設置することは出来ません

標準仕様のエコキュートと寒冷地仕様の違い

標準仕様のエコキュートと寒冷地域仕様の違い?

標準仕様のエコキュートと寒冷地域仕様の違いは、寒冷地対策を施しているかどうかになります。

搭載される主な寒冷地向け対策は以下のようなものです。

  • 外気温が低い環境での効率向上機能
  • 凍結防止ヒーターの有無
  • 凍結防止運転

順番に解説します。

外気温が低い環境での効率向上機能

エコキュートは大気の熱を利用してお湯を沸き上げる設備です。
そのため、外気温が高いほど効率的にエネルギーを利用できます。
反面、外気温が下がるほど効率が落ち、一般地(標準)仕様のエコキュートはマイナス10℃を下回ると動作環境外となってしまいます。
対して寒冷地仕様のエコキュートは、外気温がマイナス25℃でも沸き上げを可能とします。
ただし、貯湯タンクはマイナス20℃以下が見込まれる場合は屋内設置が必要です。

凍結防止ヒーターの有無

一般地、寒冷地問わず、外気温が極端に下がる季節では、配管等が凍結してお湯が出なくなるという事が多々あります。
これを防ぐために、凍結防止ヒーター(ヒーターバンド)を別途巻きつける等して凍結予防対策をとります。
しかし、寒冷地ではそれだけでは不十分です。
寒冷地仕様では、貯湯ユニットにも凍結防止ヒーターが内蔵されているなど対策がとられており、より凍結への対策がとられています。

凍結防止運転

一般地仕様のエコキュートでも、凍結対策が皆無というわけではありません。
メーカーによって仕様は違いますが、ここではダイキンを例に挙げます。
ダイキンの公式HPによると一般地仕様のエコキュートには下記のような凍結防止機能が備わっています。

機能 内容
凍結防止運転
(ヒートポンプユニット配管、風呂配管)
循環凍結防止運転(フルオートタイプに対応)
圧縮機予熱運転 圧縮機予熱運転外気0℃以下時、予熱制御を行い、圧縮機の軌道不良を防ぎます。

フルオートタイプのエコキュートは浴槽と貯湯タンク間、貯湯タンクとヒートポンプ間で水が循環する構造となっています。
しかし、外気温が一定以下になると、この水が凍結してしまい、お湯を作れなくなる危険性があります。

そこで、エコキュートは風呂配管とヒートポンプユニット配管の凍結防止用に、凍結防止運転機能が搭載されています。

メーカーによって性能は異なりますが、ダイキンは北海道旭川市に実験場を設けており、冬の最低気温がマイナス20℃を下回る中でも凍結防止運転機能が正常に稼働するか実験しています。

また、標準仕様のエコキュートに比べて、寒冷地域仕様のエコキュートは価格が高い傾向にあります
例えばパナソニックから販売されているJPシリーズ(標準仕様)とFPシリーズ(寒冷地仕様)は基本的な性能や機能はほとんど同じでも、メーカー希望小売価格が57,000円ほど違います。

寒冷地域でエコキュートを使うメリット

寒冷地域でエコキュートを使うメリットは次の2つになります。

  • ガス給湯器よりもコストが安い
  • ポンプが凍結してもお湯が使える

ガス給湯器よりもコストが安い

パナソニックの「エコキュート 北海道エリア WEBカタログ」によれば、寒冷地域でお湯を沸かす際に必要なランニングコストは、エコキュートを1とすると次のようになります。

  • エコキュート…1
  • 電気温水器…3
  • 石油給湯器‥2
  • ガス給湯器(都市ガス)…3

エコキュートは大気熱と電気を併用してお湯を作りますが、大気熱エネルギー2に対して電気エネルギーは1しか使わないため、電気温水器の3分の1程度でお湯を作ることが出来ます
そのため、エコキュートは省エネ性能に優れた給湯器といえます。

北海道の平均的なガス代は2023年時点で月額5,042円です。
家庭部門用途別エネルギー消費量によれば給湯は家庭のエネルギー消費量の3割を占めているため、北海道では給湯に年間約18,000円かかっている計算になり、エコキュートに変えることで給湯代の節約が期待できます。

ポンプが凍結してもお湯が使える

エコキュートは貯湯タンク内にお湯を貯める構造となっており、断水や停電した場合でもお湯を生活用水として使用することが出来ます。

北海道を始めとした寒冷地域では水道の凍結による断水は珍しくありません。
北海道苫小牧市では2019年11月~2020年2月までに511件の凍結が報告されており、2021年は寒波が厳しいため5日間で214件という異常なペースで凍結が起きています。

貯湯タンクは断熱材に囲まれているため、寒冷地域でも数日程度は温かさを維持します。
また、メーカーによっては生活用水だけでなく飲水としても利用できます。

寒冷地域は大規模な自然災害が起きた場合、インフラが復旧するまでに時間が掛かってしまいます。
特に冬場にインフラが途絶えてしまうと生死に関わる場合もあるため、有事の際に備えてエコキュートを購入するのは災害対策として選択肢の一つになります。

寒冷地域でエコキュートを使うデメリット

寒冷地域でエコキュートを使う場合、次のようなデメリットがあります。

  • 寒波が厳しいと使用できない
  • 室外に置く場合は雪対策が必要

寒波が厳しいと使用できない

寒冷地域仕様のエコキュートでも外気温がマイナス20℃を下回ると使用することは出来ません

日本でマイナス20℃を下回ることがあるのかと疑問に思われるかもしれませんが、旭川地方気象台や本州でも長野県菅平などでマイナス20℃を観測しています。

また、エコキュートは外気の熱を利用してお湯を作りますが、外気温が低いほどお湯を作るためのエネルギー効率が低下します。エネルギー効率が低下すれば、電気エネルギーの割合が増えてしまい電気料金が上がる可能性があります

以上のことから、エコキュートは寒冷地域仕様であっても冬場のエネルギー効率が低下するのは避けられず、異常寒波でマイナス20℃を下回ると使用できなくなるというリスクがあります。

室外に置く場合は雪対策が必要

エコキュートは室内にも設置できますが、それなりのスペースを必要とするため多くの方が室外に貯湯タンクやヒートポンプユニットを設置しています。

寒冷地域の場合、室外に置くときは積雪対策が必要不可欠になります。
なぜなら、ヒートポンプユニットの底面が雪に接する、風雪が吹き込み凍ってしまう、霜取運転によって水が流れ落ち凍結するなどが発生すると、ヒートポンプユニットが停止・故障するおそれがあります。

そのため、防雪部材を購入して設置するのが望ましいですが、セット内容によっては20,000円~40,000円ほどの出費になります。

気温の低下によるエネルギー効率の低下や使用不可能になるリスク、積雪対策のコストを考えると、寒冷地域でエコキュートを使うなら室内に設置するのが望ましいです。

メーカーも地震などが発生した場合の転倒防止として寒冷地地区屋内設置に必要な金具セットを販売しております。
ですが、エコキュートはサイズが大きいため、室内に設置するならある程度のスペースが必要になります。

寒冷地域のエコキュートの機種選び方

寒冷地域のエコキュートの機種選び方

寒冷地域に住んでいる方がエコキュートを選ぶときは、次の順番で選びます。

  • 寒冷地域仕様のエコキュートから選ぶ
  • エコキュートのタイプを選ぶ
  • エコキュートのタンクを選ぶ
  • エコキュートのメーカーを選ぶ

寒冷地域仕様のエコキュートから選ぶ

建設省が定めた「次世代省エネルギー基準」のⅠ地域・Ⅱ地域に該当する方がエコキュートを選ぶ際は、稼働できる最低気温がマイナス20℃~25℃となっている寒冷地域使用のエコキュートから選ぶことになります。

メーカー公式ホームページをご覧になると分かりますが、標準仕様とは別に寒冷地域仕様のページが用意されているので、その中のエコキュートを比較しましょう。

エコキュートのタイプを選ぶ

エコキュートは給湯タイプが3つあり、それぞれ特徴やメリットが異なります。

フルオートタイプ セミオートタイプ 給湯専用タイプ
特徴 追い炊き機能や自動湯はりなどの機能を搭載
ボタンを押すだけで様々な機能が使用できる
自動湯はり機能を搭載
機種によっては高温さし湯、たし湯も可能
昔ながらのシンプルなシステム
メリット 風呂に入る時間帯がバラバラの家庭
追い炊きをしたい人向け
フルオートタイプに比べて価格は安い 機能がシンプルな分、セミオートタイプよりも安い
デメリット 多機能な分、価格は高い 追い炊きや自動保温ができない 追い炊きや自動保温ができないお湯を張るのが手動

エコキュートはフルオートタイプが最も人気は高いですが、多機能・高性能なため価格も高額となっています。
一方でセミオートタイプや給湯専用タイプは機能がシンプルな分、フルオートタイプよりも価格は安くなっています

現在のエコキュートはフルオートタイプが主流となっていますが、セミオートタイプや給湯専用タイプも販売されています。ご家庭の事情に合ったエコキュートを選びましょう

エコキュートのタンクを選ぶ

タイプが決まったら、次はエコキュートのタンクを選びます。
エコキュートのタンクとは、貯湯タンクのことで、同じエコキュートでも容量の違うタンクが複数用意されています。

タンクの大きさは貯湯できる湯量に関わってきます。次の表は、家族の人数と湯量の目安になります。

タンク容量 家族の人数
300L~400L 3人~5人
400L~460L 4人~7人
500L~ 5人~8人

お湯をたくさん使う、あるいは来客の多い家庭だと大き目のタンクを購入した方が良いですが、タンクの大きさは価格にも影響を与えます。

例えば、パナソニックの寒冷地向けFPシリーズのメーカー小売価格は、貯湯タンクが370Lに比べて460Lの方が約10万円高くなっています。
基本的な性能や機能は変わりません。

また、エコキュートを室内に設置する場合は貯湯タンクの高さが問題になります。
上記のFPシリーズの貯湯タンクが460Lの製品は高さが2170mmもあり、梁が出ている場所では設置できないという問題もあります。

屋外に設置する場合も同様に、隣家との間に十分なスペースが無いとサイズによっては設置できないという場合があります。

エコキュートのメーカーを選ぶ

エコキュートはメーカーによって特徴が異なります。
次の表は主要なエコキュートメーカーの特徴や機能をまとめたものになります。

パナソニック 三菱 コロナ 日立 ダイキン
特徴 省エネ性能が高く、トップシェアを争うメーカー ウルトラファインバブルを利用した機能が特徴 耐震性能が高く、緊急時でもお湯を使える
低騒音や汚れ防止のコーティングがされておりマンション向け
そのまま試飲できる同時機能を搭載
高硬度の水道水や井戸水など、特殊な水質にも対応
フルオートタイプでも使用可能な入浴剤の種類が多い
薄型エコキュートの性能が高い
独自機能 エコナビ
ぬくもりチャージ
ソーラーチャージ
バブルおそうじ
ホットあわー
Wセンサー 水道直圧給湯
ナイアガラタフネス
温浴タイム
マイクロバブル入浴
寒冷地年間給湯保温効率 2.7~3.3 2.5~3.6 2.9~3.3 3.0~3.1 2.7~2.9

注目すべきポイントは、メーカーごとに異なる寒冷地年間給湯保温効率(JIS)の値です。

年間給湯保温効率(JIS)とは、消費者の使用実態を考慮に入れた給湯保温効率を示すために、1年間を通してある一定の条件のもとにエコキュートを運転したときの単位消費電力量あたりの給湯熱量および風呂の保温熱量を表したものです。

簡単に言えば数値が高いほど省エネ性能に優れているという証で、0.1違えば年間にして約1000円ほどの差が出ると言われています。

表の寒冷地年間給湯保温効率は記事執筆時点で最新の寒冷地仕様エコキュートの数値になります。

表にあるように、パナソニック・コロナ・三菱の3社が平均的に高く、次いで日立、ダイキンとなっています。

あくまでも目安で、実際の電気代などは使用方法や家族形態によって異なりますが、電気代や省エネ性能にこだわる方は寒冷地年間給湯保温効率を重視しましょう

なお、寒冷地年間給湯保温効率はタンクが大きくなるほど効率が下がっていきます

寒冷地でエコキュートを使うときの注意点

寒冷地でエコキュートを購入、使用するときの注意点は3つあります。

  • マイナス20℃を下回る可能性がある地域では屋内用を買うべき
  • 冬場で省エネ設定だと湯量が足りなくなる
  • 定期的に霜取りを行うこと

マイナス20℃を下回る可能性がある地域では屋内用を買うべき

ここまででも何度か触れましたが、エコキュートは寒冷地仕様であってもマイナス20℃を下回ると使用できなくなります

そのため、マイナス20℃を下回る可能性がある地域では、エコキュートを購入する際は屋内設置用を購入するのが望ましいです。

基本的に屋外設置用と屋内設置用は外形寸法や本体カラー、主な機能などに違いはありません。ただし、屋外設置用に比べて25,000円前後高くなる傾向があります

冬場で省エネ設定だと湯量が足りなくなる

エコキュートは外気温が低い冬場だとエネルギー効率が低下するため、夏場に比べて給湯代金が上がる傾向にあります。
そのため、エコキュートに搭載されたAI学習機能によって省エネ設定に変更し、湯量を少なくして節約しようとすることがあります。

しかし、冬場はお湯の消費量が増える時期でもあります。
夏場はシャワーで済ませていた人も、冬はしっかりと温まりたいから風呂に切り替えるのも珍しくありません。

冬場で省エネ設定にしていると、湯量が足りなくなって昼間にお湯を生成するようになってしまう事があります。
エコキュートを導入する際に電気プランを変更しますが、大抵の場合が昼間の電気料金が高いプランになっているため、余計な電気代を使ってしまうことになります。

電気料金が高い昼間にお湯を作らないように、湯量のコントロールはきちんとしましょう。

定期的に霜取りを行うこと

冬場のエコキュートでよくあるトラブルが、「夏場は湯量が余るのに冬場は湯量が減ってしまう」という内容です。

上記でも説明しましたが、冬場は消費湯量が増える時期のため、夏場と同じ設定だと湯量が足りなくなりやすいですが、もう1つ別の理由が考えられます。

それは、ヒートポンプユニットの背面に霜が付いている可能性です。

エコキュートは空気中の熱を利用してお湯を作りますが、熱を利用された空気は冷却されて排出されます
その際に、冷たい空気に含まれている水分が結露し、ヒートポンプユニットの背面に霜となって付着することがあります。

付着した霜を取り除かずに放置すると、ヒートポンプユニットが目詰まりを起こしてしまい、給湯効率が低下します

冬場に湯量が足りなくことがある場合は、ヒートポンプユニットの背面に霜が出来ている可能性が非常に高いです。一度確認をしてみましょう。

エコキュートには名称こそ異なりますが、霜取りモードが搭載されています。
霜が出来ていなくても、定期的に霜取りモードを起動することで、霜による目詰まりを予防することもできます。

また、霜以外にも積雪でヒートポンプユニットが埋まってしまうと給湯効率が低下します。
積雪対策を行い、積雪量によってはヒートポンプユニット周りの雪かきを行いましょう

まとめ

以上が、寒冷地域仕様エコキュートの選び方の解説になります。
エコキュートは省エネ性能に優れた給湯器で、寒冷地域でもお湯を作るランニングコストを安くすることができます
しかし、空気の熱を利用してお湯を作るため、標準仕様ではなく寒冷地域仕様のエコキュートを選ぶことになります。

選ぶときのポイントはJISの数値やタンクの湯量、メーカーごとの機能などを選考基準にするとよいでしょう。
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